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普通遺言の種類 ― 各遺言の特徴と、メリット・デメリットまとめ
こんにちは。暑さも和らいで、秋を感じる日も増えてきました。
さて、今回は遺言書の種類についてです。
民法で定められている遺言の方式は大きく「普通方式」と「特別方式」があり、「普通方式遺言」は、さらに「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類に分かれます。
それぞれに長所・短所があり、どの方式を選ぶかで迷われる方もいらっしゃいます。そこで、各遺言の特徴と、メリット・デメリットをまとめました。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者本人が全文・日付・氏名を自筆し、押印して作成します。(財産目録は自筆でなくてもかまいません。)
保管は自宅などでするほか、後ほどご説明する「自筆証書遺言保管制度」を利用して、法務局に任せることもできます。
自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言は自宅で一人で作成できる遺言ですので、費用がかからず、思い立った時に手軽に作成できる点にメリットがあります。また、証人をたてる必要がないため、遺言書の内容はもちろん、存在自体を秘密にすることができます。
自筆証書遺言のデメリット
反対に、一人で作成し、保管しているために生じるデメリットもあります。
例えば、だれもチェックをしていない遺言書は形式の不備で無効になる恐れがありますし、自宅で保管している場合には紛失や改ざんのリスクがあります。また、遺言書自体が有効であったとしても、その内容を実現するには家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。
自筆証書遺言保管制度
このようなデメリットを解消するために活用されるのが「自筆証書遺言保管制度」です。
作成した自筆証書遺言を法務局に持参し(予約が必要です)、保管してもらう制度です。法務局が遺言を保管してくれるため、紛失や偽造の心配がなく、検認手続きも不要となります。
※検認手続き:遺言者が亡くなった後に、家庭裁判所に申し出る手続きで、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成します。原本は公証役場に保管され、相続発生後の「検認」は不要です。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言は、専門家である公証人が遺言作成にかかわることから、形式不備で無効になるリスクはほとんどありません。遺言能力等についてもある程度担保されるため、法的に最も確実な遺言方法といえます。
公証役場が遺言を保管してくれるため、紛失や偽造の心配もありません。また、このことから検認手続きも不要ですので、相続発生後、遺言に従って手続きをする際にもスムーズに動くことができます。
公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリットは、公証人への手数料がかかることと、証人2名が必要であること、公証役場に出向く必要があることです。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が内容を自分で作成し、封印した上で公証役場に提出する方式です。
公証人は「遺言が存在すること」を証明しますが、中身は確認しません。また、保管は遺言者自身でする必要があります。
秘密証書遺言のメリット
秘密証書遺言は、内容を秘密にしたままその存在だけを証明することができますので、誰にも内容を知られたくないが、いざというときには確実に発見してほしいという方にとってメリットが大きといえます。また、自筆証書遺言と異なり、パソコンや代筆で作成することも可能です。
秘密証書遺言のデメリット
ただし、公証役場に出向く必要がありますし、証人も2名必要です。
また、遺言者が亡くなって遺言を用いる際には検認手続きが必要になりますし、秘密証書遺言の場合、公証人は遺言書の中身について確認しないので、形式の不備で無効になるリスクもあります。
実務上も、秘密証書遺言は利用が少ないのが現状です。
ポイントまとめ

・自筆証書遺言 → 費用があまりかからず手軽(不備に注意が必要。「自筆証書遺言保管制度」の活用が望ましい)
・公正証書遺言 → 費用の都合がつけば、安心・確実でおすすめ
・秘密証書遺言 → 現実にはあまり使われていない
最後に
遺言は財産を分けるだけの事務的な手続きでなく、大切な思いを残すための手段です。
方式ごとの特徴を理解し、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。
「作成したいけど、どの方式を選べば良いか迷っている」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。